2011年06月15日

米軍軍属の通勤途上の交通事故処罰をめぐる法的問題(1)

日米地位協定の問題点について、実際の事件・事故を通して解説いたします。

1、事件概要
2、日本警察・検察の処分、
3、遺族の検察審査会への不服申立、

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米軍軍属の通勤途上の交通事故処罰をめぐる法的問題
2011・6・13 弁護士 新垣 勉

1 事件の概要
加害者Aは,在沖米海兵隊富フォスター基地内に所在する米空軍管轄の陸・空物資販売フォスター基地のメインストアーに勤務する軍属(23歳)であった。Aは,2011年1月12日午後9時43分頃,普通乗用車を運転し,沖縄市比屋根の道路で,時速50㎞で,前方の車両を追い越そうと車線を変更したところ,当時,降雨後で路面が湿潤し,かつ,下り勾配の道路であったことから,加害車両は滑走して対向車線に進入し,対向車に衝突した。同衝突により,被害車両を運転していた19歳の青年が死亡した。

2 日本警察・検察の処分   
警察は,捜査をなして,検察庁に送致した。ところが,検察官は,米軍が本件事故は,公務中の事故であった旨説明したことから,検察官は,本件事故は,「公務中の事故・犯罪」であるとして,第一次裁判権は,米軍にあるとして,2011年3月24日,不起訴処分とした。
その理由は,米軍は,日米地位協定第18条3項,(a),(ⅱ)により,Aの行為は,軍属の「公務執行中の作為又は区作為から生ずる罪」に該当するので,第一次裁判権は,米軍にあるという点にあった。

3 遺族の検察審査会への不服申立
被害者の遺族は,検察官の不起訴処分に不服であるとして,検察審査会に対し,2011年4月25日,審査請求をなした。
検察審査会は,同申立を受けて,2011年5月27日,「本件不起訴処分は不当であり,起訴を相当とする。」との議決をなした。
このため,検察官は,再捜査を行っており,改めて,起訴するか否かを判断することとなる。

(続く)

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