2011年06月15日
米軍軍属の通勤途上の交通事故処罰をめぐる法的問題(3)
米軍軍属の通勤途上の交通事故処罰をめぐる法的問題(3)
5、米軍の対応
6、山口県岩国での同種事案
7、今後の予測される問題
5、米軍の対応
6、山口県岩国での同種事案
7、今後の予測される問題
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米軍軍属の通勤途上の交通事故処罰をめぐる法的問題(3)
2011・6・13 弁護士 新垣 勉
5 米軍の対応
ア 米軍は,被疑者Aに対し,5年間の運転禁止処分を課したと説明している。
これは,米軍は,軍属に対して,刑事処分を課すことが上記連邦最高裁判決によりできないことを十分に認識していたことから,懲戒処分として,運転禁止処分を課したものではないか,と推測される。
日本のマスコミでは,刑事処分と懲戒処分の性質の違いが十分理解をされておらず,あたかも,刑事第一次裁判権の行使の結果,上記運転停止処分が課せられたかのような報道がなされているが,問題である。
イ 私見では,米軍は,懲戒処分で,あたかも米軍が刑事第一次裁判権を有し,これを行使したかのような印象を日本国民に与えようとしているのではないか,と疑っている。
(米軍の処分は,「量刑が軽い」と言う問題ではなく,そもそも,それは刑事処分ではなく,懲戒処分であること,すなわち刑事裁判権競合の問題は存しないことを,もっと明確に報道をすべき。)
6 山口県岩国での同種事案
2010年9月7日,午前7時過,岩国市で出勤途上の米軍属(女性)の運転する普通乗用車が通行中の日本人に衝突し,死亡させる事故が発生した。同軍属は,現行犯逮捕されたが,5時間後に釈放された。
検察庁は,同年10月7日,米軍が公務中証明を出したことより,不起訴とした。これに遺族が不服を唱え,10月29日に検察審査会に審査請求をなしたが,同審査会は,2011年3月11日,「不起訴は相当」と議決した。
米軍は,被疑者軍属に対し,4ヶ月の運転禁止処分をなしている。
7 今後の予測される問題
ア 検察が起訴を行えば,社会的な事件となる。また,検察官が再度不起訴としても,検察審査会が再度起訴相当決議を行うと,裁判所が検察官役の弁護士を指名して,被疑者Aを日本の裁判所に起訴することになる。いずれにしても,社会的な耳目を集める事件となる。
イ 起訴は,地位協定の解釈を刑事手続の中で法的論点として争うことになり,日米地位協定の矛盾点,不合理性を内外に浮き彫りとすることになる。(但し,被疑者Aは,すでにアメリカに帰国しており,現実には,日米犯人引渡条約に基づき,Aの引き渡しを求めて,刑事裁判の審理が進行することになる。従って,外交上も,日米地位協定の解釈が問題となる。)
以上
米軍軍属の通勤途上の交通事故処罰をめぐる法的問題(1)
米軍軍属の通勤途上の交通事故処罰をめぐる法的問題(2)
米軍軍属の通勤途上の交通事故処罰をめぐる法的問題(3)
2011・6・13 弁護士 新垣 勉
5 米軍の対応
ア 米軍は,被疑者Aに対し,5年間の運転禁止処分を課したと説明している。
これは,米軍は,軍属に対して,刑事処分を課すことが上記連邦最高裁判決によりできないことを十分に認識していたことから,懲戒処分として,運転禁止処分を課したものではないか,と推測される。
日本のマスコミでは,刑事処分と懲戒処分の性質の違いが十分理解をされておらず,あたかも,刑事第一次裁判権の行使の結果,上記運転停止処分が課せられたかのような報道がなされているが,問題である。
イ 私見では,米軍は,懲戒処分で,あたかも米軍が刑事第一次裁判権を有し,これを行使したかのような印象を日本国民に与えようとしているのではないか,と疑っている。
(米軍の処分は,「量刑が軽い」と言う問題ではなく,そもそも,それは刑事処分ではなく,懲戒処分であること,すなわち刑事裁判権競合の問題は存しないことを,もっと明確に報道をすべき。)
6 山口県岩国での同種事案
2010年9月7日,午前7時過,岩国市で出勤途上の米軍属(女性)の運転する普通乗用車が通行中の日本人に衝突し,死亡させる事故が発生した。同軍属は,現行犯逮捕されたが,5時間後に釈放された。
検察庁は,同年10月7日,米軍が公務中証明を出したことより,不起訴とした。これに遺族が不服を唱え,10月29日に検察審査会に審査請求をなしたが,同審査会は,2011年3月11日,「不起訴は相当」と議決した。
米軍は,被疑者軍属に対し,4ヶ月の運転禁止処分をなしている。
7 今後の予測される問題
ア 検察が起訴を行えば,社会的な事件となる。また,検察官が再度不起訴としても,検察審査会が再度起訴相当決議を行うと,裁判所が検察官役の弁護士を指名して,被疑者Aを日本の裁判所に起訴することになる。いずれにしても,社会的な耳目を集める事件となる。
イ 起訴は,地位協定の解釈を刑事手続の中で法的論点として争うことになり,日米地位協定の矛盾点,不合理性を内外に浮き彫りとすることになる。(但し,被疑者Aは,すでにアメリカに帰国しており,現実には,日米犯人引渡条約に基づき,Aの引き渡しを求めて,刑事裁判の審理が進行することになる。従って,外交上も,日米地位協定の解釈が問題となる。)
以上
米軍軍属の通勤途上の交通事故処罰をめぐる法的問題(1)
米軍軍属の通勤途上の交通事故処罰をめぐる法的問題(2)
Posted by kaiteiNGO at 20:23│Comments(0)
│実例を通して知る日米地位協定の問題点